デビュー30周年記念アルバム(CD+DVD)アヴァンタージュ 10月19日発売。

新曲9曲に加えて、ファンには堪らないあっと驚くボーナストラックを2曲収録。DVDには、2004年12月の中野サンプラザ公演と2005年3月の府中の森芸術劇場公演より6曲と、本人監修のプライベートショットを収録。

CD DVD  
1.アゲインスト
2.できたての季節に
3.Around and around
4.鮮やかな場面
5.霧のこころ
6.スプラッシュ
7.余白の街
8.Dムーン
9.あなたに還る日
<ボーナストラック>
10.夢の途中譜
11.ねじれたハートで

1.浅い夢
2.もうすぐ、たそがれ
3.エピソード
4.夢の途中
5.Goodbye day
6.サラリーマン
ANYC-12024〜5 定価:3,990円(税抜3,800円)  
発売:日本音声保存  製作:潟Gニー/テンイヤーズ

ボーナストラックには、みんな驚くんじゃないかな

Q:30周年記念アルバム『avantage』は、一通り作業が終わって、完成を待つばかり、という感じですね。
来生たかお:そうだね。
小松:発売は10月19日です。


Q:CDとDVDがセットになっているんですね。DVDには、どんな曲が収録されているんですか?

来生:去年の中野サンプラザでのコンサートと、今年の春にやったソロ・ライブの中から選んで。サンプラザのコンサートからは『浅い夢』、『サラリーマン』、『Goodbye Day』。ソロ・ライブからは『もうすぐたそがれ』、『エピソード』、『夢の途中』。

Q:曲を絞る基準というのは?

来生:最近、キティから過去の映像がDVDで発売されたんだよね。『Goodbye Day』や『夢の途中』は、そのほとんどに収録されているから、本当は避けたかったんだけど。どうしも、はずせないっていうことで。だから、『夢の途中』は、あえてソロ・ライブのヴァージョンを収録することにした。

Q:『サラリーマン』は、レア映像になるんじゃないですか?

来生:そうだね。あと、『エピソード』は、デビューコンサートでオープニングに演奏した曲なんだよ。『もうすぐたそがれ』は、ソロで演奏して、割と雰囲気があるんじゃないかな、と思って選んだんだ。

Q:今回、アルバムについては、すべてオリジナル楽曲だというのが、すごくアグレッシブですよね。しかも、代表曲については、ライブ映像が収録されていて、バランスが良いですよね。
来生:去年の『egalite』と、今回の『avantage』は、2枚でひとつの作品だという考え方なんだよ。タイトルも、前回がフランス語のデュース(テニス用語)だったから、自然にアドバンテージのフランス語になったんだよね。安易なのかどうか、わからないけど(笑)。

Q:わかりやすいし、アグレッシブだし。
来生:アドバンテージを取ったのか、取られたのか(笑)。

Q:え? 取られたんですか? 取りに行く一打でしょ?

来生:そうあって欲しいけどね。今回は、メンバーもスタッフもスタジオも、全部『egalite』と一緒なんだよ。


Q:そういう意味でも、完全に2枚で1作品ということなんですね。

来生:そう。『egalite』は4曲新曲で、2曲が思い出の曲だったけど、今回の『avantage』も、まったくの新曲だけじゃなくて、ボーナストラックを入れようということになったんだ。最初は、『サラリーマン』のように、10代の頃に作った曲を、また紹介しようかな、と思っていたんだけど、姉の方から「詞が、あまりにも恥ずかしい」って言われて。好きな曲があるんで、また別の機会に紹介できればな、と思っているけどね。

Q:ボーナストラックでは、えつこさんとのデュエットが実現していますね。
来生:『Dear my company』の時には、大橋純子さん、中森明菜さん、薬師丸ひろ子さんとデュエットしたんだけど、今回のデュエットは、姉の方から言い出したんだよ。「『ねじれたハートで』なら、歌えるかも」って。それで、「ああ、作者ふたりで歌うのも面白いかな」と。姉の歌を、ちゃんと聴いたのは、30年以上前のことで。姉が大学生ぐらいの時、PPM(ピーター・ポール&マリー)の『500マイル』とかね、ああいうフォークソングを歌っているのを聴いた記憶があるんだけど、割と良い印象が残っていたんだ。

Q:レコーディングはどうだったんですか? 歌は別々にレコーディングしたんですよね。

来生:別々だよ。姉の友達にピアノをやっている人がいて、今回のレコーディング前に、少しボーカル・トレーニングをやったみたい。

Q:レコーディングの時にアドバイスとかは?

来生:そうだね。レコーディングには立ち会っていたけど、「大丈夫だろうな」とは思っていたんだ。姉も開き直っていたし(笑)。

Q:えつこさんの感想は聞かれました?

来生:いや、まだ聞いていない。
小松:歌った時は、ご本人も不安だったと思うけど、割と、周りからの評判が良いから安心したんじゃないかな。

Q:もう1曲のボーナストラックが、『夢の途中譜』ですね。
来生:2003年が小津安二郎監督の生誕100年で、テレビで特集が組まれていたりして、改めて作品を見て感動したんだよね。それで、去年は小津作品にハマって。小津監督の戦後第一作で、『長屋紳士録』という飯田蝶子さん主演の作品があるんだけど、これが実に面白い。その中で、長屋の住民が福引みたいなものに当って、宴会をやるというシーンがあるんだけど、そこで笠智衆さんが『のぞきからくり』の一節を歌う。

Q:『のぞきからくり』ですか?

来生:子供の時、縁日やお祭りで見た記憶があるんだけど。箱型になっていて……。

Q:万華鏡みたいな?

来生:そうだね。箱をのぞくと、その中で絵が回っている感じかな。それで、その話を紹介する歌を、横で歌っているんだ。

Q:サイレント・ムービに歌をつけている、という感じですか?

来生:そう、そう。で、その一節を、映画の中で笠智衆さんが歌うんだけど、それがすごく良かったんだ。それで、その替え歌っていうか、僕のストーリーみたいなものにして、やりたいな、と思って。

Q:歌詞はえつこさんが?
来生:ある程度、「こんなことを歌いたい」という内容を姉に渡して、歌いやすいように姉につけ加えてもらったんだ。

Q:で、出来上がった歌詞を見て、その場で作曲しながら歌ったっていう感じなんですか?

来生:作曲っていうより、笠智衆さんが歌っていた感じを、適当に真似たというか。ジャパニーズ・ラップっていう感じ。たぶん、ファンの人は驚くんじゃないかな。

Q:茶碗の音が聞こえた時には、びっくりしましたよ(笑)。映画でも、茶碗が使われているんですか?

来生:そう。みんなが茶碗を叩いている。

Q:レコーディングは、どうやって?
来生:スタッフみんなが、茶碗とか、色々と持参してね。ミュージシャンも、スタッフも総出で合いの手を入れて。小松も参加しているよ。

Q:ミニ宴会が、そこで繰り広げられたわけですね(笑)。

来生:まあ、良いか悪いか、わからないけど。


散歩をしている時に、曲が浮かぶこともある

来生:オリジナルの9曲も、自分らしい曲が揃ったと思っているよ。

Q:珠玉の9曲っていう感じですよね。
来生:だいたい、僕の曲は、メジャー系のハートフルなバラード、マイナー系の切ないバラード、リズミックでポップなもの、マイナー系でちょっとハードなもの、というパターンに分けられるんだけど。

Q:出来上がった楽曲の中から、そういう、すべてのパターンを選んでいったわけですね。たかおさんの持ち味が、すべて散りばめられているという感じがします。
来生:斬新な曲という意味では、『余白の街』という、7分ぐらいの組曲的な楽曲があるね。
小松:これは、実は、結構前に書かれた曲で。曲もすごいけど、歌詞もいいよね。

Q:『余白の街』は、もともと一曲として書かれていたものなんですか? それとも、別々の曲を組み合わせたとか?
来生:最初から、ああいう形で作っていたよ。

Q:曲を作る時って、ボーカリストとしての自分を頭に置いて作ったりするんですか? 作った後で、「これは歌うの、難しいかも」とか思ったりしない?
来生:「レコーディングの時、大変だろうな」とか、想像したりはするね。

Q:でも、そこで妥協はしないわけですね。

来生:そうだね。それをやっちゃうと、面白みがなくなっちゃうから。

Q:歌詞に関しては、えつこさんと打合せをしたりとか?

来生:うーん、曲もそうだけど、もう、まったく新しいものなんてないから。とにかく、自分らしいものを、ということで。だいたい、同じパターンになっちゃうけど、それはそれで、作品自体が良い仕上がりであればいいんじゃないか、と。歌詞に関しては、今回、かなり苦心したんじゃないかな。時間的にも短かったし。なかなか浮かばなくて、結構、しんどい思いをしたんじゃないかな、と思うけど。

Q:バラエティに富んでいるし、やはり曲に合っているという意味で、さすがだと思います。

小松:すべてがオリジナル楽曲だという意味では、7年ぶりになるんですよね。
来生:そうなんだよね。『Dear my company』が25周年記念アルバムで、デュエット曲とか、代表的な曲を押さえたベスト盤的なアルバムだったから、完全なオリジナルアルバムということになると、『Purity』以来になる。


Q:曲を書く時って、例えば途中まで出来た曲を、ちょっと置いておいたりするんですか?
来生:それが、ほとんどだね。一挙に作り上げるということは、滅多にない。

Q:デビューの頃から、そういう感じでした?

来生:そうだね。本を読む時でも、"乱読"ってあるじゃない。あんな感じかな。良い部分が出来たら、そのまま取っておいて、違う曲に取り掛かる。で、他の作業をしていて、「あ、これは、あの曲につながるな」というのが浮かぶ時もある。他のシンガーに書く場合は、そういうわけにもいかないから、一曲を最後まで仕上げるけど。

Q:ご自分の曲を書く場合は、割と暖めながら?

来生:そうだね。時間があるからね。散歩しながら浮かんだメロディを、家に帰ってメモしておくとか。

Q:散歩中に録音したり、しないんですか?

来生:録音はしないね(笑)。口ずさんで、憶えておく。戻ってきて、そのままテープに録音する場合もあるし、音符にしておく時もある。よく、寝る前に浮かんだりするんだけど、それが結構、良かったりするんだよね。

Q:それは、そのまま寝ちゃうんですか?

来生:そうすると、次の日に、まったく忘れていたりするわけ。
Q:良い曲だったということだけ、憶えているわけですね(笑)。
来生:「これは、絶対に良い曲だ。このメロディなら、憶えていられるだろう」と思うんだけど、翌日には、すっかり忘れているんだよね。だから、無理やり起きて、メモしておくということもあるよ。

Q:結構、散歩中に曲が浮かんだりするんですね。

来生:うん。散歩中は、結構あるね。あと、ライブが近づいてくると、散歩中に歌詞を憶えたりもするよ。

Q:今回、楽曲のアレンジは?
来生:『egalite』と同じで、僕もアレンジしているよ。

Q:たかおさんが担当したのは、どの曲ですか?

来生:『アゲインスト』、『出来立ての季節に』、『around and around』、『余白の街』の4曲。『アゲインスト』と『余白の街』は、ビートルズみたいなサウンドにしたかったから、ドラムをリンゴ・スターっぽくしてみた。

Q:歌っていて、難しかったのはどの曲ですか?

来生:『あなたに還る日』かな。

Q:逆に、スムーズに進んだのは?

来生:『出来立ての季節に』は、3回テイクぐらいでOKだったよ。あっさりと。他の曲は、そうはいかなかったけど。やっぱりバラードだと、メロディラインをなめらかに歌いたいっていうのがあって、それがなかなか綺麗に決まらないんだよね。バラードは難しいね。

Q:ライブで歌うことも、考えながらレコーディングしたりするんですか?
来生:今回の30周年記念ツアーでは、『avantage』の曲を全曲歌おうと思っているんだよ。

Q:楽しみですね。

来生:今まで、新譜を出してツアーをやっても、収録曲を全曲演奏したことはないんだよね。まあ、前回の『egalite』は新曲が4曲だったから、全曲やったけど。でも、聴く側としては、新曲というよりは、やっぱり代表的な曲を聴きたいと思うのかな、と。そう考えると、新曲ばかりでもね。

Q:それでも、今回、全曲やろうと決めたのは?
来生:やっぱり、記念のアルバムでもあるしね。全曲演奏しようと。もちろん、代表的な曲も歌うから、2時間半ぐらいのコンサートになるかな。

Q:じゃあ、トークは極力控えないと。

小松:
15分ぐらいで、まとめてくれるといいんだけど。

Q:今まで、トークの最長はどのくらいですか?

来生:25分ぐらいかな。


Q:これまで、コンサートは毎年途切れずにやっていますよね。

来生:そうだね。アルバムは途切れた年があったけど、コンサートは毎年やっているね。

Q:正直、「しんどい」っていう時もありましたか?

来生:いや、それはないな。「やりたい」という気持ちの方が強い。ソロ・ライブにしても、前回の反省を活かして、来年はもっと良いものをやりたいと思っているしね。

小津作品のカーテン・ショットを意識してDVDを制作したんだ


Q:30周年を意識したのは、いつ頃ですか?

来生:25周年の『Dear my company』を出した時に、「30年まで、あと5年しかないけど、やっていけるのかな」と思ったんだよね。もちろん、やりたい気持ちはあったんだけど、このご時勢で、色々と大変じゃない。今回は、本当にエニーさん(レコード会社)に協力していただいて、ありがたいな、と。去年の段階ではレコード会社も決まっていなかったんだけど、エニーさんの方から「30周年記念アルバムを一緒にやりたい」と言ってもらって。

Q:すごく良い形でアルバム制作が進みましたよね。たかおさんご自身も、自由にというか、楽しんで作られている感じがします。
来生:写真やデザイン関係に携わるというのも、『egalite』が初めてだったんだよね。ちょうど、小津作品にはまっていた時だから、小津監督に縁のある場所や、『サラリーマン』が生まれた場所の風景を収めたりしたんだ。で、今回の『avantage』も、写真関係では小津作品にこだわってみようかな、と。DVDでは、曲の間に色々な風景のカットを入れているんだよ。

Q:なるほど。単純にライブ映像をつなげただけではなくて、ひとつの映像作品になっているわけですね。
来生:小津作品の特徴のひとつに、カーテン・ショットというものがあるんだけど。彼は、シーンが変わるところで、フェードアウトとかを使わないんだよ。必ず風景のショットを入れる。例えば家のシーンから会社のシーンに移ったりするところで、丸の内のビルとか、そういう風景のショットが入るんだけど、それがすごく印象に残るんだよね。で、今回のDVDには、そういうカーテン・ショット的な映像を加えてみたんだ。洗濯物とかね。

Q:洗濯物?
来生:小津作品には、洗濯物のショットが結構多く使われているんだよ。他にも煙突とか、電車の中から捉えたショットとか、色々とあるんだけど、一番多いのは、多分、洗濯物じゃないかな。それがすごく印象的で。郷愁感があってね。洗濯物の色も、鮮やかで綺麗なんだよ。


Q:思ったような、洗濯物のショットは撮影できましたか?

来生:千葉の館山にある姉の別宅に、洗濯物の物干しを作ってもらってね。

Q:物干しから作ったんですか?

小松:そうだよ。撮影は穴掘りから始まったんだから。

Q:干される洗濯物にも、こだわりがあったわけですね。
小松:もちろん。
来生:色とかね。
Q:全部、たかおさんが指定したんですか? 干されるものも?
小松:そう。こういうものと、こういうものって。
来生:小津監督は、赤が好きだったらしいんだよ。必ず、どこかに赤が使われている。鮮やかな赤が。例えば、部屋の中に真っ赤なやかんがあったりとか。


Q:意外ですね。私は小津監督の作品を見たことがないんですが、モノクロとか、色がついていたとしても、少しトーンを落とした色というイメージがありますけど。

来生:小津監督の作品には、6本しかカラー作品がないんだけど、どれも色彩がすごく綺麗だよ。

Q:私も含めて、これから初めて小津作品を見るという人に、お勧めする作品を教えてもらえますか?

来生:やっぱり、カラー作品の『彼岸花』、『秋日和』、『お早よう』、『秋刀魚の味』かな。カラー作品には、他に『浮草』と『小早川家の秋』という作品があるんだけど、"小津的"という意味からすると、ちょっと違う感じなんだよね。

Q:DVDの映像だけではなくて、ジャケットも当然、小津テイストなんですね?

来生:ジャケットにも、洗濯物を使っている。今回、箱に収納されるような形になっているんだけど、その外箱は、真っ白なんだ。ビートルズの『ホワイトアルバム』みたいな感じにしたかったから。で、その真っ白な箱からCDを抜き出すと、洗濯物の写真を使ったジャケットが現れる。歌詞カードの表紙はネオン街なんだ。

Q:ネオン街?
来生:新宿のゴールデン街で撮影したんだけどね。これも、やっぱり小津作品に必ず出てくる。

Q:新宿のゴールデン街が?

来生:いや、ゴールデン街じゃないんだけど、そういう雰囲気のネオン街が出てくるんだ。これがまた、綺麗なんだよ。看板から、なにから。それが、すごく印象に残っていて。そういう感じの写真を撮りたいな、と思ってゴールデン街に行ったんだ。
小松:大変だったんだよ、まず下見をしたりして。


Q:たかおさんは、ゴールデン街って、馴染みはあるんですか?
来生:いや、全然ない。
小松:えつこさんは、あるみたいだけど。昔は、編集関係者とかが多かったみたいだから。


Q:ジャケットの洗濯物とか、ゴールデン街には、たかおさんも一緒に映っているんですか?
来生:ジャケットの写真には、写っていないんだ。DVDのカーテン・ショットには、映っているけどね。犬と散歩をしていたり。で、そのカーテン・ショットのバックには、『浅い夢』インスト・ヴァージョンが流れている。
小松:そのインスト・ヴァージョンも、今回のDVD用に新たにレコーディングしたんだよ。


Q:凝ってますねぇ。


周りの人たちの支えがあって、ここまで来られた
来生:オリジナルアルバムは『avantage』で20枚目ということになるんだよね。
小松:だからこそ、あえて代表曲のリメイクとかを入れずに、純粋にオリジナル曲だけで作りたかったっていうのはありますね。
来生:この先が心配だけどね(笑)。

Q:心配って! アヴァンタージュから相手に一本取られて……。
来生:またエガリテに戻る(笑)。

Q:戻らないでください(笑)。曲作りの姿勢とか、30年の間に変わったりしていますか?

来生:変わっていないなぁ。

Q:ボーカルということについては、どうですか?

来生:ボーカルは、まだまだだね(笑)。いや、本当に。今回、DVDに収録するということで、久しぶりに自分のライブ映像を見て、聴いたけど、勉強になったね。これからは、もう少し良くなると思うよ。やっぱり、レコーディングの場合は何回もやり直しが効くけど、ライブは一発勝負だから。

Q:これまでの、10周年、20周年という節目と比べて、30周年というのは、どんな感じですか?
来生:本当に長い間やってきたな、と。30年って、本当に長いよね。僕は25歳でデビューしたんだけど、今、54歳だもんね。独身だったのが、結婚して、今は子供が25歳と22歳。母だって、今、80歳だけど、30年前は50歳でしょ。父は亡くなっているし。時の流れを感じるね。小津作品では、結構、そういう"反復とずれ"が描かれていて。淡々と、毎日同じような生活を繰り返しているようでも、絶対に、ちょっとずつ違うという。それを、つくづく感じるよね。それにしても、やっぱり幸せだと思うよ。小さい時に夢中になったことが、そのまま職業になっているっていうのは。

Q:それでは最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
来生:自分のアルバムを出せただけでも夢のようなことなのに、それからずっと続けられて、30周年を迎えることができました。それは当然、僕ひとりでは無理だったことで、周りの人たちの支えがあったからこそだと思っています。そういった意味では、僕は本当にラッキーで、幸せ者です。これからも、どうぞよろしくお願いします。








来生たかおのデビュー30周年記念アルバムが、ついに完成した。
昨年、予告編とも言えるミニアルバム「egalite」(エガリテ)を発表し、メロディ・メーカーとしての揺るぎない力を見せつけた来生が、いよいよ本編を送り出したのである。アルバム・タイトルは「avantage」(アヴァンタージュ)。

テニス用語"アドバンテージ"のフランス語で、前作の「egalite」("デュース")から一歩進んだ心境が表れている。

 独特のうねりを持った美しいメロディ。決して埋もれることなくメロディを際立たせる歌詞。少年のような若々しさとドキリとする艶を併せ持つ歌声。どれひとつ欠けても成り立たない完璧なトライアングルがここにある。
真正面から放つ渾身の一打でアドバンテージを奪う……30周年への意気込みが、この1枚に詰め込まれているのだ。

 アルバムが完成した9月某日、来生たかおに、その心の内を聞いた。

interviewed by chika watanabe