40th Anniversary | 40周年記念特集

デビュー30周年記念として企画した「トークセッション」が、10年の時を経て復活!来生たかおが、自ら会いたい人にアポイントを取り、お店やメニューまでアレンジする対談である。今回は、フジテレビで放送されている「芸能界麻雀最強位決定戦THEわれめDEポン」の実況アナウンサー野島卓さんと、解説者の梶本琢程さんをお招きして、愛してやまない麻雀について語り尽くす。 来生たかおが選んだお店は、ハイアットリージェンシー東京の日本料理「佳香(かこう)」。落ち着いた雰囲気のお座敷で、極上の和牛ステーキを頬張りながらの対談は3時間に及んだ。

【ホスト】

来生たかお(きすぎ・たかお)
僕には麻雀をやる時に、勝負服ごときの服がある。それはいつだったか、麻雀をやっていて、集中できず、結果もかんばしくない時があった。なぜ集中出来なかったのか、考えた末に出した結論は「フケ」だ。僕はフケ症で(そんな病名があるのかわからないけど、まあ単なる体質だと思う)、頭を洗っても洗わなくてもフケが出る。そして、僕には髪をかきあげる癖がある。無意識についついやってしまうのだが、色の濃い服を着ているとフケがぼろぼろ落ちてしまう。そのことに気づいて集中出来なかったんだと。それ以来、麻雀をやる時にはフケが落ちても目立たない色の服を着るようにした。これが僕の勝負服ごときの服である。

【ゲスト】

野島卓さん(のじま・たかし)
1967年1月3日生まれ。B型。1989年、早稲田大学卒業後、フジテレビに入社。入社から5年ほどは、主にスポーツ実況(バレーボール、陸上、モータースポーツなど)を担当。「芸能界麻雀最強位決定戦THEわれめDEポン」では、1995年10月の放送開始から実況を担当している。2004年から2007年までNYへ赴任。2012年10月からは「FNNスピーク」を担当。

梶本琢程(かじもと・たくのり)
1971年生まれ。鳥取県出身の麻雀ライター兼解説者。また、麻雀博物館の館長でもある。モンドTV麻雀プロリーグのナビゲーターとして、1,000回以上の対局を解説。「麻雀絶対定跡 勝つための50の法則」など、著書多数。愛称・梶やん。

【外 野】

小松裕二(こまつ・ゆうじ)
1962年生まれ。来生たかお担当マネージャー。

渡辺智加(わたなべ・ちか)
1962年生まれ。元、来生たかおファンクラブ会報編集者。現在はトランスクリプショニスト(平たく言えばテープ起こしライター)。久しぶりの対談取材で舞い上がりつつ、飛び交う麻雀用語に頭を抱えている。

Part 2

最初は「THEわれめDEポン」に抵抗感があったんです(来生)
来生
「THEわれめDEポン」っていうのは、ルールが凄いじゃないですか。最初は、やっぱり抵抗感があって(笑)
野島
そうですか(笑)
来生
こんな麻雀、ちょっと邪道だと。最初からドラが2枚めくれててね。あれは、最初からそうですか?
野島
最初からです。
来生
それで、われたところ……自分の山の人間が上がれば倍、振れば倍払うわけでしょ?で、東だけですよね。
野島
そうです。東風戦です。
来生
僕らは普通の、東南の半荘の正攻法の麻雀をずっと打っているから、最初は抵抗感があって。今はもう、すっかり馴染んでますけど。面白いなって。ものすごい大逆転があるじゃないですか。そういう醍醐味があるから。あと、タバコがOKですよね。あれがいいな、と思っているんですよ。
渡辺
今もそうなんですか?
来生
今もそう。だから、坂上忍さんなんてバンバン吸う。タバコ、何箱か積んでますよね?
野島
たいてい、萩原聖人さんと坂上忍さんは5箱ずつ、テーブルに積んでます(笑)
来生
5箱! だから、もし、僕がお誘いを受けてやるとしたら、萩原聖人さん、坂上忍さん、風間杜夫さん、見栄晴さん。このあたり(笑)
梶本
全員、タバコを吸うから(笑)
来生
自分もヘビースモーカーだから。他の棋戦は禁煙になりましたよね。吸う人にとっては、結構、キツいんじゃないかなと思って。
野島
本当にそうなんですよ。世の中の目が厳しくなって。
来生
でも、なんかホワイトカラーっぽくなっちゃう。
野島
あらゆる部門で、そうなんですよ。TVって。
来生
TVドラマなんかも、違和感があって。応接間のテーブルに何にもないっていう……灰皿があるべきだろうって。新聞記者室みたいな場面で、タバコをくわえながら電話するとか、原稿を書くとか、そういう場面がなきゃ、全然、凄味がないですよ。
野島
今や、リアルもそうですよ。みんな喫煙室に行って、タバコを吸って戻ってくるっていう。悲しい世の中です。
来生
新聞のコラムを書く人とかね、ロクなものを書けないんじゃないかって。
渡辺
それはどうかな(笑)
野島
そういう側面はあると思います。
来生
早く仕上げてタバコを吸いに行こう、とかさ。やっぱり、思考する時にはタバコがないと。
野島
本当にそう思います。私が会社に入って、一番、衝撃だったのは、見習いに行って、ニュースを読んでいたのが露木さんだったんですね。「本番5分前です」って言われた時に、露木さんがタバコに火をつけて、根元まで吸って、そのまま床に捨てた。足でギュギュっと踏み消した姿を見て、「スッゲー会社に入っちゃったな」と思ったんです(笑)
来生
へえ〜(笑)
野島
当時は、それが常識だったんですよ。
小松
その頃、露木さんはアナウンス部長?
野島
確か、局長になっていた時だと思います。
小松
そのままですか。
野島
そういう時代だったんですよね。今じゃ、考えられないですけど。
来生
昔は、7〜8割の人が吸っていましたからね。今、タバコを吸う人にとって、くつろげる場所って、タバコが吸えるところなんですよ。
渡辺
店を決める時の最初の選択肢ですね。
来生
そう。昨日も、父の日だったから、中華料理屋さんに家族で行ったんだけど、禁煙だった(笑) もう、早く食べて帰ろうと。
野島
タバコがメインで(笑)
来生
やっぱり、中華なんかは、一服しながらじゃないと、ゆっくりできませんよね。本当にくつろげなくなっちゃって、辛いです。
野島
今は雀荘ですら、禁煙のところがありますからね。
梶本
禁煙雀荘、ありますね。
野島
あれはちょっと、考えられない。
来生
あ、梶本さんは止めたんだよね。止めた人って、やっぱり煙が気になっちゃう? 最初から吸わない人は気にならないと思うんだけど。
梶本
副流煙を向けられると、ちょっと気にはなります。
来生
副流煙は根拠がないんですよ。
一同
(笑)
来生
いや、ほんとに。発がん性だったら、お酒。ワインが一番ヤバいですけど。お酒や排気ガスは確実に。でも、タバコって、絶対の根拠がないんです。80年代の初頭に、日本の学者がアメリカで論文を出したんですよ。副流煙に発がん性があるって。でもこれ、当時、却下されたんです。何の根拠もないって。ただ、インパクトがあったわけですよ。でも、そのうちに、いつの間にかアメリカで健康ブームが起きて、タバコには害あると言い出して。日本も真似して健康ブームになっちゃった。で、便乗する形でタバコの副流煙に発がん性があると。吸わない人に迷惑がかかるっていうことで、たぶん、少数の嫌煙派に僕らは負けた(笑) あとは、やっぱりクリーンな街づくりとか、そういうのもあって。インフラの一環でタバコをなくそうと。
小松
梶本さんは、そういう風潮がなくても止めてましたか?
梶本
僕は、それとは関係なくて。ちょっと痩せなきゃな、と思って。
来生
でも、タバコを止めると太っちゃうよ。
梶本
まず、運動するために。とりあえず、風邪を引いたのをきっかけに。吸いたくなくなった勢いで、みたいな。
小松
割とすんなり止められました?
梶本
1カ月くらいかかりましたけど。
野島
それで、スポーツやっているの?
梶本
歩くだけです(笑) でも、すごく痩せたんですよ。
来生
そうそう。痩せてTVに出てきて。「えー、どうしたんだろう?病気したのかな?」って。
梶本
15キロ、ガーンと落として、10キロ戻りました(笑) 3分の2、ピョーンと跳ね返った感じで。
野島
いいんですよ。もうね、欲望のままに。
小松
タバコって、一日、どのくらい吸われます?
野島
1箱程度です。
来生
社内では、そんなに吸えないでしょう。
渡辺
声のお仕事なのに、気にされないんですか?
野島
特に、それは気にならないです。
小松
入社当時に、露木さんを見ちゃっているから(笑)
野島
ただ、吸える環境が、どんどん少なくなっていますね
小松
その環境で1日20本って言ったら、かなり吸っているほうかもしれませんね。
野島
そうですね。ことあるごとに、喫煙所に(笑)
来生
今日は車でいらしたということで、やっぱり、車だと心置きなく吸える?
野島
当然、そうですね。
来生
僕も、自宅と車の中でしか、くつろげないですけど(笑) うちはカミさんも吸うんで。
野島
それは恵まれていますね。
来生
家にはミニチュアダックスがいて、そろそろ13歳になるんですけど、いつも煙の中にいて元気ですよ(笑) 全然、大丈夫。
小松
家では気をつかわれているんですか?
野島
結婚していた当時は、相当、気を使っていました。
来生
ということは、今は?
野島
今は、野に放たれています(笑)
来生
いいじゃないですか、気楽で。あれ、梶本さんは?
梶本
僕は、まだ独身です。
野島
する気、あるの?
梶本
まったく。予定もないですし。
野島
ないよね。満足しているよね、今の自分に。
梶本
そんなこともないんですけど。まあ、慌てなくてもいいかな、と。
来生
そのぐらいの年齢になったら、もう結婚などしないほうがいいですよ。
野島
また、そんな(笑)
小松
今、3割くらい、結婚していないらしいですね。2030年になると、もっと増えるっていう。
来生
今は、社会がすべてやってくれるから。
渡辺
でも、来生さんは、結婚していなかったら大変だったでしょう?
来生
僕はダメだ。
渡辺
でしょ? 料理しないし。
来生
でも、今は料理をしなくたって、社会が全部、そろえてくれるからね。
バラエティの頂点を見た気がしました(野島)
来生
「THEわれめDEポン」で、強いてちょっと良くないな、というところは、水着姿の女性(笑) あれはいらないと思う。麻雀番組なんだから。あれは男性へのサービスなんですか?
野島
先ほど申し上げたように、制作が「ものまね」班なんですよ。元々の根っこが。バブルの頃に最盛期だった、ものすごく勢いのあったチームなので、バブルの香りをなくしたくないんですよね、どうしても。当時、深夜のバラエティ番組って、意味もなく水着の女性が出ていたじゃないですか。その名残りです。「俺たちの根っこはここだぞ」ということを示すアイコンみたいなもので。あれがないと、逆に、あのチームは不安になっちゃうみたいです(笑)
来生
なんか、集中できないですよね。変なことを考えちゃう(笑)
野島
それも狙いのひとつです(笑) 経費削減ということを考えれば、一番、必要ない経費なんですけど、あれは、どうしてもなくせないんだと思います。あのチームにとっては。
来生
メンバーの人選っていうのは、スタッフが?
野島
そうです。やはり忙しい方が多いので、なかなか決まらないんです。オンエアの日が2カ月前くらいに決まって、それからスケジュールを探りますので、「大丈夫です」という人が見当たらないことが多いと聞いています。
小松
拘束時間はどのくらいですか?
野島
22時入りで……
来生
0時くらいから放送しますよね?
野島
生放送は0時なんですけど、その前に1ゲームだけボーナストラックを撮っているんです。お金を払った人しか見られない、オンデマンドというのがあって、その収録のために22時に入っていただいて。
来生
それはスコアと関係ないんですか?
野島
関係ないです。エキジビションマッチです。
渡辺
放送は月に1回とか?
野島
今は、ほぼ月に1回ペースです。
来生
賞金は100万円でしょ?
野島
今は50万円ですね。平場は50万円で、24時間とか、特別バージョンの時は100万円です。
来生
そうなんですか。
野島
4月に地上波で放送された回は100万円だったんです。
来生
でも、その他にギャラは出るの?
野島
出ます。
来生
個人で賭けているとか、そういうことはない?
野島
個人で賭けると、2位でも上がっちゃうとか、そういうことが起きちゃうんですよ。トータルで沈まないために。なので、「それは絶対にやめてください」とお願いしていますし、みんな、やっていないです。
小松
前に、聞いたじゃないですか。
来生
そうでしたっけ?
小松
昔、来生さんの楽曲を使ったドラマがあって(1988年放送・TBS系「柴門ふみスペシャル〜新・同棲時代」)。3話のオムニバスだったんですけど、そのうちの1話が萩原聖人さんの主演で、来生さんも出演したんですけど、もう、それが聞きたくて(笑) 「あれは実際、どうなの? 賭けているの?」って。
梶本
それを聞くためだけに、みたいな(笑)
小松
で、「いや、賭けていないです」って。やはり、そういう理由があったんですね。当時、すごく「THEわれめDEポン」に出ていたっていうイメージがあります。
来生
いや、今だって常連ですよね?
野島
常連です。一番、出場回数が多い。
小松
役者の仕事よりも麻雀が好きみたいですよね。
野島
もう、本気度が違います(笑)
来生
芸能人では、萩原さんはトップクラスですよね。見ていても、やっぱり凄いな、と思うし。
野島
他の追随を許さない域に、彼は達していると思います。
渡辺
プロになるという感じではないんですか?
野島
プロになる意義がないので。
梶本
ならないほうがいいんです。拘束されないから。
野島
まあ、ストイックですよ、麻雀に対して。
小松
たまにドラマで見たりするけど、いいですよね。
野島
若いころは主役方向の仕事が多かったから、世の中の人から見ると、「あまり見なくなったな」という印象かもしれないですけど、年齢なりの、脇のいいところで出ていますよね。
小松
この間、NHKの「64(ロクヨン)」を見たんですよ、横山秀夫さん原作のドラマ。あれに萩原さんが刑事役で出ていて、やっぱり存在感があるな、と。年齢を感じさせないというか。
渡辺
萩原さんって、いくつぐらいでしたっけ?
梶本
僕と同じ年くらいですから、43歳か44歳じゃないでしょうか。
小松
「THEわれめDEポン」には、お笑いの人も参戦していますよね。
野島
おかげさまで。お笑いの人がいなかったら、もっと面子選択に困るだろうな、というくらい、いまや欠かせない感じです。
来生
お笑いの人も強いですよね。アンジャッシュの児島さんとか。彼はプロなんだよね。
梶本
資格を取っています。活動は、そんなにしていないんですけど。
来生
あとは、スピードワゴンの小沢さんも上手い。ヘビースモーカーでね。でも、お笑いの人は静かだよね。
梶本
芸人さんの方が、ガチなイメージがありますね(笑)
来生
昔、堺正章さん、井上順さん、加藤茶さん、加賀まりこさんという回があって、会話が面白かった。麻雀を知らない人が見ても、十分、楽しめる(笑)
野島
バラエティの頂点を見た気がしました。
来生
井上順さんが面白くて。でも、麻雀を好きな人から見ると、ちょいと。やっぱり、お笑いの人は真面目に集中してやるじゃないですか。その方が、麻雀が好きな人間としては。
ガッカリしちゃうんですよ、プロに(野島)
来生
梶本さんが麻雀を始めたきっかけは?
梶本
大学に入ってからですね。
来生
鳥取でしょ?
梶本
はい。高校3年まで、ずっと地元で。
来生
大学に入る前は、やっていない?
梶本
「ドンジャラ」みたいな、麻雀に近いゲームは、やっていたんです。子供の頃に。僕は一人っ子なので、遊び相手がいないから、毎週、日曜日になると同級生を呼んで、やっていたんですけど、麻雀はやったことがなくて。で、大学で東京に出てきて、鳥取県人寮に入ったら、「麻雀、できるか?」と言われて、「できないけど、覚えます」って(笑) 遊び部屋みたいなのがあるんですよ。留年しているような先輩の部屋が。そこに毎晩、行っていました。1年生だから、1限から大学に行くんですけど、帰ってきて、3時、4時までやって、始発で大学に行く、みたいな。さすがに体力的にキツくなって(笑)、その寮を出たんですけど、一人暮らしになったら、今度は面子がいない。段々、寂しくなって、大学の寮に入ったら、どこでも麻雀をやっているんです。
来生
それでハマって、プロになろうと思った?
梶本
試験の時って、みんな、さすがに勉強するんですよ。そうすると、段々、打つ相手がいなくなるから、フリー雀荘っていうのに行ったんですけど、そこから競技麻雀にハマって、「ちょっと試験を受けてみようか」と。21歳の時ですね。
小松
うちの息子と同じですよ。
渡辺
自分は強いと思ったんですか?
梶本
トップになれば本も売れるし、本に取り上げられるだろうし……ということもありつつ、「どのくらい強いのかな?」というのを、腕試し的な感じで。
野島
そんな打算があったんだ(笑)
梶本
一応は(笑) とりあえず、どんなもんかな?みたいな。強い人って、全部、牌の裏側まで見えるのか、とか。そういう幻想があったので。それで入ってみたんです。
小松
今は全自動だけど、手積みでやっていると、本当に、どこまで覚えているのかっていうね。
梶本
そうですね。積み込み的な。
小松
すごい人は覚えている、みたいな話になるじゃないですか。ああいう人と麻雀を打っても勝てないですよね。どう考えても。
来生
それがプロ。インチキじゃないけど、最低でも……
小松
自分のところは全部、覚えている。
来生
そう。他の牌も、覚えるだけ覚えちゃう。サイコロの目を出す技術もある。
小松
それは、やりました?
梶本
サイコロは、さすがにバレちゃうんで。
渡辺
それは違反なんですか?
梶本
違反というより、モラルですね(笑)
野島
“置きザイ”と言ってね。
梶本
「ちゃんと振った?」って言われちゃう。
小松
バレずにやる人もいるんですか?
梶本
コロコロっと回さずに。
来生
小島武夫さんは、本当に上手かったらしいですね。
梶本
手先が器用だったみたいです。リアルで見たことはないんですけど。今でも、あの年で、やっていますから。
来生
プロって、そのへんはフェアというか、平等になっちゃった?
梶本
なりましたね、完全に。僕らは過渡期で。
来生
全自動になって、牌もわからないし。サイコロだって自動だから。
渡辺
昔の技術が使えなくなった?
梶本
ものすごく減りました。
来生
今は場数でしょうね。毎日のようにやっていれば、流れをつかめる。たまにやる人とは、そのへんで差が出るんじゃないかな。僕なんか、プロに勝てる自信がまったくない。
野島
そんなことはないでしょう。
来生
半荘2回とかね、たまたま巡りあわせでツイていて、勝つ場合があるかもしれないけど、少し長く打ったら絶対に勝てない。
野島
もちろん、トッププロには凄い人が多いですけど、普通にプロって言っている人たちは、まぁ、普通ですね(笑) びっくりするくらい普通です。
来生
そうなんですか?
野島
はい。ガッカリしちゃうんですよ、プロに。
来生
対戦を見ていると、地味は地味ですよね。「ここで降りちゃうんだ」みたいな。
野島
その巡目で、それ鳴いちゃうんだ、とか。
梶本
そっちが多いですね、今は。
来生
加賀さんとか、坂上さんを見ていると、ビンビン行くじゃないですか。ああいうところは、プロとは違う。それが面白いんですよ、見ていても。でもプロは、最後に勝負するところが凄いじゃないですか。
野島
いや、そういうシーンを見せてもらっていないです。我々が求めるプロ像って、なんとなくですけど、究極の才能というか、ギリギリまで読み切って、「ここか、ここの2択だ」と。そういう姿を見せてくれれば、「やっぱり凄いんだな」と思えるんですけど、とにかく早いリーチがかかったら、あとはもう、「ごめんなさーい」って、中抜きで降りていく。そんな姿を見せられると、「何のためのプロなんだ?」と。
小松
俺たちと一緒じゃないか、と。
野島
そうそう。そうなっちゃうんですよ。
小松
所詮、当たり牌は2牌か3牌で、あとは全部ハズレなんだから、と。そういう粋なところを見せてほしい。それはわかります。
野島
とにかく早いテンパイ入った人の勝ちだろう、という麻雀に、実際、なっちゃっているんです。今のプロが。小島先生みたいに、「そんなクソみたいな手で上がるわけないだろう」みたいな姿勢を見せてくれるプロが、あまりいないんです。そこが残念です、とても。
小松
何か、神格化されている部分がありますからね、プロは。
野島
なんとなくね。
小松
小島さんもそうだし、桜井章一さんとか、色々いるじゃないですか。「当たり牌以外は何でも振る」みたいなイメージって、どこかにあったりするから。
野島
プロとしての技術を見せる場というのが、麻雀の風潮とともに、どんどんなくなっているような印象があって。プロ側も、それを良しとしているようなところがあって、ちょっと歯がゆいですね。
小松
梶本さんは、週にどのくらい対局されるんですか?
梶本
公式戦とかがないので、よく打って、月に20回とか。
来生
半荘20回?
梶本
週に1回もないんじゃないですかね。4人でセット麻雀やったり、ネット放送での対局とか。
小松
野島さんなんかも、ある程度、ストレス感じているみたいだから、放送が終わった後、やりたいと思いませんか?
野島
若い頃は猛烈に思っていました(笑) 今はもう、終わったら早く寝たいな、と。
小松
じゃあ、振らないプロと一緒かもしれないですよ(笑)
野島
おっしゃる通りです(笑)
来生
でも、結構、打っているんでしょ?
野島
いやいや。若い頃に比べると、歴然と少なくなっていますね。
小松
週1で打つのは大変でしょ?
野島
週1では打てないです。月1でプラスアルファがあるかな、と。
小松
今、月1で来生さんとやっているんですよ。
来生
月例麻雀。半荘4回が、今は一番いいかな、と。
梶本
そう言われてみれば、僕も月1のセットでやっていますね。昼からやり始めて夕方までやって、お酒を飲みに行って解散、みたいな。その時に次のスケジュールを決めておくと、毎月、続く感じになるので。
来生
小松氏の身内に、もう一人、強いのがいて。その彼と、僕ら夫婦で。うちのカミさんもやるもんで。
野島
凄いですね。
来生
うちのカミさんは、「こういう役があって、上がれるんだろうな」というのはわかるんだけど、それが何点なのかはわからない。でも、振るべきものがわかるので、ボケないためにね。
梶本
本当に、役に立ちますよ。
来生
本当にそう。麻雀はね。
小松
来生さんは、よく落とすんだ、牌を(笑) 「この牌、すべるんだよ」とか言って。
来生
チョンボやったりね。
梶本さんの牌捌きって、美しいですよね(来生)
来生
梶本さんも、昔はTVでやっていたよね。
梶本
元々、プレイヤーですから。
来生
最近、対局は見ないんだけど。
梶本
そうですね、MONDOでは全然、打っていないんで。
来生
梶本さんの牌捌きって、美しいですよね。
野島
はい。見た目と麻雀が違うんです(笑) 昔から思っていたんですよ。すごくホワーンとした感じを人に与えるのに、麻雀ではこんなに切れ込むんだ、っていう印象でした。
渡辺
牌捌きが美しいって?
来生
それぞれ特徴があってね。滝沢和典さんなんかも綺麗なんだよ。
梶本
めちゃくちゃ綺麗ですね。
野島
あ、タッキーとは、おやりになったんですか?
来生
いやいや、TVで見て。
野島
かっこいいですよね。
来生
ツモって牌を切るとか、リーチをかける所作がね。
野島
プロには大事ですよね。
梶本
かっこいい切り方をする人の打ち方を映像で見て、それを真似るんですよ。
小松
うちの息子なんかもそう。かっこいい打ち方を見ると、それを真似してる。取ってから入れて、回して打つまでの一連の流れを。
来生
僕は将棋も好きなんだけど、将棋も駒捌きの美しさってあるんですよ。
野島
特に音がいいですよね、将棋は。
来生
麻雀では、鈴木達也さんだっけ、すごく慣れているでしょ。牌の切り方が綺麗な人は、本当に綺麗。
渡辺
来生さんも、そういうところを意識したりするんですか?
来生
そうだよ。でも、なかなかイメージ通りにはいかない(笑)
小松
すべっちゃうから(笑) でも、雀荘に来る人、増えましたよね。
梶本
実は、雀荘は結構、下火なんですよ。ネットが多くて。で、高齢者の方で、健康麻雀的なものをやる人は、すごく増えました。
来生
僕はラウンドワンでメダル遊びをしたりするんですけど、そこに麻雀があるんですよ。
野島
ラウンドワンにあるんですか?
来生
ありますよ。
梶本
それは初耳です。
来生
麻雀ゲームですけど。お金を入れてやる。
梶本
ああ、「麻雀格闘倶楽部」とか、「MJ」とか、そういうやつですね。
来生
いっぱいあるんです。
小松
あれは対戦できるんでしょ?
梶本
昔のゲームはコンピュータ相手で、100円入れてもすぐ終わっちゃうようなものだったんですけど、今は、全国のゲーセンでやっている人同士で、オンラインを通じて対戦できますね。
小松
話は変わりますが、「われめ」って、いつ頃から始まったんですか?
梶本
インフレルールが出来た頃ですから、昭和40年代とかだと思います。サラリーマン麻雀の流れで。
小松
日本の文化ですよね。
梶本
そうです。ドラも、そもそも日本発祥なので。
小松
“あかウー”も日本?
梶本
そうです。東京五輪がきっかけで、ウーピンを全部赤くして。
来生
僕が「THEわれめDEポン」のルールで思うのは、赤を入れないのがいいですよね。赤も入れちゃうと、あっという間に終わっちゃうおそれがある。
梶本
ドラが増えすぎると、たぶん、リーチが減っちゃって、リーチのドキドキ感とか、なくなっちゃう気がしますね。
来生
あの感じがいい。あれですごく馴染んで。最初は抵抗があったけど、今は面白いなと思っています。ただ、もうひとつ。梶本さんならご存知かもしれないけど、昔の中国のルールだと、嶺上開花(リンシャンカイホウ)……5筒をツモると役満っていうのがありましたよね?
梶本
ありました。
来生
「山の頂に花を咲かせる」っていう、嶺上開花。5筒が、花が開いた感じに似ているんで、5筒をツモると役満だっていう。
梶本
5筒もあるし、1筒もあるんです。
来生
5筒はハイテイでしょ?ハイテイって、海の底って書くんです。で、ロウユエでしたっけ?
梶本
海底摸月(ハイテイラオユエ)。
来生
月を掬うって書くんだよ。海に映った満月を掬い上げる……イーピンは満月に似ているから、イーピンをツモると役満だっていう。これとか、「THEわれめDEポン」のルールに入れたらいいんじゃないかな(笑)
梶本
いや、覚えきれないかもしれない(笑)
来生
より大逆転の要素が増えるんじゃないかな、と。滅多にできないから。それも面白いかな、赤を入れるよりは。
小松
だいぶ前に、沖縄で麻雀をやった時、雀荘で……「赤5」はわかるんですけど、3も7もあるんですよ。
梶本
3は九州なんですよ。
小松
あれはビックリで。7もありましたよ。
梶本
7は珍しいですね。
野島
全部、ドラなんですか?
小松
1枚ずつ、あったんですよ。
梶本
要は、アカ3筒、アカ三萬。5じゃなくて。
小松
7もあったんですよ。で、5もあるから、もう、とんでもない麻雀になっちゃって。
野島
そうでしょうね。
小松
その時、「われめ」でやっていたんですよ。
来生
すぐ終わっちゃうじゃない。
小松
すぐですよ。徹マンやって、9時に一回、解散して、その日に帰る予定だったんだけど、台風で飛行機が飛ばないからって、3時に集合して、またやったんです(笑)
野島
それはしんどい(笑)
小松
で、3時からは、とりあえず3と7をなくしましょう、と。
梶本
考えるとかじゃなくて、作業みたいになるんですよね、麻雀が。上がり競争するだけのゲーム。昔の自民党ルールとか、そんな感じですよ。
小松
あと、大阪に行くと、3人打ちが多いんですよ。これって、関西人らしいですよね。4人揃うまで待てないって(笑) 関西人は、やるんですよね、3人で。
梶本
関西のフリー雀荘の9割以上。300件中、285件が3人麻雀ですよ。
来生
僕らも、たまに大阪でやると、ほとんど3人。4人でやっているのが珍しい。
梶本
今でこそ4人も増えましたけど。関西、四国、山陽くらいまでは3人麻雀ですね。4人集まっても、1人は抜け番で、休憩してご飯を食べたり、人の手を除いて野次を言ったり、そんな感じですよ。
(次回へ続く)