40th Anniversary | 40周年記念特集

「僕が好きな映画(洋画編)」

 もう、とっくに明けてしまいましたが、遅ればせながら、2020年、明けましておめでとうございます(1月14日にしたためています)。
 今年も人混みを避け、七日に東伏見神社へ参拝に行ってまいりました。姉のえつこ、えつこの友人、そして、かみさんと。「今年は何を願おうか。確か去年はボケないことだったな」などと思いながら、二礼、二拍手、一礼したのですが、結局、何も願わずに終わってしまい、「あれ?」と。でも、いいか。それほどシリアスなことがないのだと思えば(本当はありますよ、この年になればねぇ、いろいろと)。

さて、小生、60代最後の年になりました。いつまで続けられるんでしょうか。作家の故・山口瞳氏は、還暦を迎えた時、「ひとは生まれて、勉強して、仕事をして死ぬというのは間違っている。仕事と死の間に隠居があるべきではないか。そうでないと人生は完結しないように思う」と言っておられました。同じく作家の故・山田風太郎氏は65歳引退説を提唱されておりました。小生も、まったく同じように思ってはいたのですが、なんとなくズルズルと、古希を迎える年齢になってしまいました。まだ余力はあるのか、自問自答しながらではありますが、今年でデビュー45周年を迎えます。とりあえずは、なんとか乗り越えようと考えておりますので、変わらぬご贔屓のほど、よろしくお願いします。また、皆さんが今年も無事に過ごされますよう、重ねて願っております。

今回は、これまで小生が観てきた映画の話を。映画狂から見れば大した数ではないですが、映画を観ることは楽しみの一つです。「ひとは、どうして映画を観るのか」については、またの機会にしまして、映画も音楽も輝いていた60年代、70年代の作品の中から、今観ても色あせない、面白くて素晴らしい、僕好みの映画を紹介します。

「デリンジャー」(1973年アメリカ/ジョン・ミリアス監督)

 のちに「パブリック・エネミーズ」のタイトルでリメイクされましたが、(主演はジョニー・デップ)、これは失敗作だと思っています。申し訳ないですが。「デリンジャー」のほうが、はるかにいい。小生のベストワンと言ってもいいほどの作品だと思っています。主演はウォーレン・オーツ(1982年53歳没)。40歳を過ぎて初の主演作でした。「夜の大走査線」では情けない警察官役、サム・ペキンパー監督作「ワイルドバンチ」にも出ていた役者です。この映画を観たのは「丸の内東宝」だったのではないかと記憶しています。当時、ロードショー作品を観るなら、池袋か新宿のほうが近かったのですが、まだ怖い街のイメージがあって、だいたい有楽町か銀座まで行って観ていました。
 この映画は、1930年代のアメリカに実在したギャング「ジョン・デリンジャー」を描いた作品です。圧巻は、なんと言っても銃撃戦。特に、リトル・ボヘミア・ロッジのアジトをFBIに囲まれての銃撃シーンは、今観ても凄まじく、当時は映画館で心臓バクバクでした。デリンジャーと4人の仲間は、なんとか散り散りに逃げるのですが、それぞれの散り際がいい。特に良かったのは、農家に匿ってもらったプリティボーイ・フロイドの描き方です。朝食を食べている時、FBIに囲まれて「いよいよ聖書が必要ね」と農家の奥さんに言われるのですが、「今まで散々悪いことをしてきたが、楽しく生きた。今更必要ない」と言って感謝を述べ、家から走り出す。この朝焼けの中で散って行くシーンは泣けます。
 この映画はセリフも洒落ているのですが、全編、叙情的に描かれていて哀愁があります。音楽も素晴らしく、テーマ曲はポール・マッカートニーの「ハニー・パイ」を彷彿とさせます。また、一度捕まった後、見事に脱獄して愛するビリーと再開するシーンで流れるメロディーは秀逸です。

 

 こんな感じのメロディーだったと思いますが、とても、とても素晴らしく、深く印象に残っています。
 愛人ビリー役でミシェル・フィリップス(元ママス&パパスのメンバー)、ベビーフェイス・ネルソン役で「グッバイガール」や「ジョーズ」のリチャード・ドレイファス、ホーマー役で「エイリアン」、「パリ、テキサス」の名優ハリー・ディーン・スタントンが出ています。お勧めします。是非、ご覧ください。

その他、60年代、70年代に観た好きな映画をいくつか。

「俺たちに明日はない」(1967年アメリカ)
 ボニー&クライド。ラストシーンが衝撃的で、当時、映画館で観終えて、しばらく席から立ち上がれなかった。

「ジャッカルの日」(1973年イギリス・フランス合作)
 ドゴール大統領の暗殺劇。警察と殺し屋のスリリングな攻防戦が素晴らしい。

「フレンジー」(1972年イギリス)
 連続ネクタイ絞殺事件を描いたサスペンス・スリラー。ヒッチコックの後期の作品です が、一番気に入っている。

「さよならをもう一度」(1961年フランス・アメリカ合作)
 イングリッド・バーグマンがとても美しい。ブラームスのシンフォニー第三番第三楽章をアレンジしたメロディーが印象に残るメロドラマ。

「柔らかい肌」(1964年フランス/フランソワ・トリュフォー監督)
 不倫を描いた作品ですが、サスペンス調でラストがすごい。ちょっと古くなりますが、モンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラー主演で三角関係を描いた「陽のあたる場所」(1951年アメリカ)もせつなくていい。石川達三氏の「青春の蹉跌」は、これがモチーフになっているのでは?

「サブウェイ・パニック」(1974年アメリカ)
 2009年にデンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタでリメイクされていますが、ウォルター・マッソーとロバート・ショウのオリジナルのほうがはるかにいい。ラストが驚き。ラストが驚きと言えば、イザベル・ユペール、サンドリーヌ・ボネール主演の「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇」(1995年フランス・ドイツ合作)も、とても怖い。お勧めします。

 まだまだ他にもたくさん紹介したい映画はありますが、またの機会にしたいと思います。

1987年8月 TBS クイズダービーより
 




それでは、みなさん、ごきげんよう。

2020年1月  来生たかお


トークセッションVol.1  トークセッションVol.2
「日日是好日」
「タバコについて」
「光陰矢の如し」
「人生はペーソスだな」
「犬も歩けば・・・」
「喉元過ぎても来生たかお」
「断捨離始めました」
「僕が好きな映画(洋画編)」【new!】