「灰⾊の脳細胞のひとりごと」
今、⽇本男⼦の平均寿命は81.47 歳だそうだ。⼩⽣は今年73 歳になるので、あと8年でその年齢に達することになる。
あと8 年? もうすぐじゃん! 参りますね。
ただ、これはあくまで平均寿命であり、もしかしたら90 代まで⽣きるかもしれないし、その前に逝ってしまうかもしれない。まあ、どちらにしても、嫌ではあるけれど……
作家の故・⼭⽥⾵太郎⽒は、「死は推理⼩説のラストのように、本⼈にとって最も意外な形でやってくる」と⾔っていた。遠からず⼩⽣にもやってくるわけだが、まだ諸々やりたいことがあって、今はまだ死にたくないというのが本⼼である。
今から40 年ほど前、中学⽣でプロ棋⼠になった天才・⽻⽣善治⽒が現れた。その後、次々とタイトルを獲り、50 代になった今でも現役で活躍している。⼩⽣は、その姿をずっと⾒てきたわけだが、⽻⽣善治⽒を上回る藤井聡太という天才棋⼠が現れ、破⽵の勢いでタイトルを次々獲っている。しかし、その藤井聡太⽒がシニアで活躍する姿を⾒ることは、まず出来ないだろう。もちろん、同様のことは他にも累々とあるのだけれど、そのことを思うと「⼈⽣はペーソスだな」と、しみじみと感じてしまう。
最近、「プラン75」という⽇本映画を観た。75 歳から⽣死を選択できるという制度が⽇本の国会で可決され、その後の安楽死が認められた世界を描いた⼤変重い映画である。⼩⽣は以前から安楽死に関⼼を持っていて、近い将来、この映画で描かれたような世の中になるのではないかと考えている。社会⽣活が困難になり、施設や病院、⾃宅で寝たきりになっている⽼⼈は、既に数百万⼈いると⾔われているが、団塊の世代が後期⾼齢者になれば、こうした⼈たちが増え続け、⾯倒⾒きれない状況になるかもしれない。
⼭⽥⾵太郎⽒は、「⼈間、最後は70%以上が⾃分の排泄物の始末もできない状態になり、オムツをあてがわれて死を迎える」と⾔っていた。では、俗に⾔う“ピンピンコロリ”はどうだろう。⼼筋梗塞、くも膜下出⾎、脳梗塞など、どれも今までに体験したことのない激痛、苦痛があるそうで、それを味わって永遠の闇に葬られるのは、なんだか納得がいかない。
要するに、ほとんどの⼈間は、最後に苦しんで逝くのであって、⽼衰などは稀だ。そう考えると、やはり安楽死が良いのではないかと思ってしまうのだけれど、「プラン75」で描かれた最後の死に⽅、死に場所は、少し気になった。暗く、広い部屋に狭い間隔でベッドがずらりと並び、カーテンで仕切られただけの場所で酸素マスクからガスが流れる。こんな冷たい対応は、ちょっと嫌だな。
昔、作家の故・武⽥泰淳⽒が安楽死について、こんなことを⾔っていた。「注射は嫌だな。打たれた時、痛いだろうし、これで死んでいくのだと分かってしまう。そうではなくて、例えば、今までに嗅いだことのない、とても、とても良い⾹りのするパフューム(実はこれが毒ガス)で恍惚感をも得られ、そのうちに意識が薄らいで死んでいくという死に⽅はどうだろう」と。⼈間、⽣まれた時は分からないのだから、死ぬ時も分からないほうが良い。しかも、過去最⾼の恍惚感が得られるのなら。ちょっと現実味は薄いけれど、⼩⽣には、これが良いように思える。
「プラン75」は、死ぬことと、⽣きることへの強い問題提起である。⼩⽣が⾼齢者になったこともあって、深く考えさせられる映画であった。また、主演の倍賞千恵⼦さん、そして、その他のキャストの皆さんの⾃然な演技にも惹きつけられた。観終わったあとに気づいたのだけれど、コールセンターのスタッフの1 ⼈を演じていたのは河合優実さんだった。2⽉下旬から「旬すぐ」のCM で中森明菜さんの「スローモーション」が流れているのだけれど、その画⾯に映し出されているのが河合優実さん。⼥優さんだったんだね。
今回は、どっぷり暗い話になってしまったけれど、四六時中、こんなことを考えているわけではないので⼤丈夫。これから良い季節になります。我が家のミミも、ワクチンなどが完了し、やっと散歩に出られるようになります。そして、6 ⽉にスタートするライブの準備も進めていきます。ご期待ください!
それでは、また次回。ご機嫌よう。
3 ⽉末⽇ 来⽣たかお